この心臓が錆びるまで


 生温い風が踊る屋上で少女を眺めていた俺は、ふと違和感を覚えた。いつもとは何かが違う気がした。見下ろすが、外見はいつもと何ら変わりはなく、相変わらずニコニコと鼻歌を口ずさんでいる。

 あることに気付き、制服のポケットから携帯を取りだしサブディスプレイで時間を確認した。


「10分過ぎてる…」


 いつもなら必ず決まった時間に校舎へと消えて行く少女が、今日は何故かその時間を過ぎても校舎へ戻らないのだ。




―――――




「校舎戻んなくて、いいのかな」


 少女を見つめながら、呟く。先程からそれが気になって仕方がない。先程の違和感から既に30分が経過していた。何を焦っているのか、俺は携帯と少女を交互に見つめては、あ゛ーなどと呻き声を上げている。

 少女の鼻歌が途切れ、辺りは静まり返った。少女が再び歌い出す気配はない。俺は携帯を制服のポケットへ戻し、ある決意と共に、屋上を後にした。


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