この心臓が錆びるまで
いつもと同じ花。
いつもと同じ空。
いつもと同じベンチ。
昨日と何一つ変わらない中庭の風景が、しかし昨日よりも新鮮に映るは、気のせいではないだろう。
花も草も木も空も、全てが私を祝福している。そう思えるのだって、きっとそれは事実だからだ。自惚れてると思われたって構わない。私は自分のことが大切だし、愛している。それはもう自己愛なんて言葉では表せないくらいに、だ。
爽やかな風が頬を擽り、髪を揺らす。ゆるいカーブを描く栗色が太陽に反射しキラキラと輝いている。自分の髪がこんなにも綺麗だと思ったことなんて、今まで一度も無かった。
「おめでとう、私」
自然と笑みがこぼれる。そしてタイミング良く、小鳥たちが一斉に羽ばたいた。
此処は、学校の裏庭。
生い茂った木々の中心の拓けた空間に、一脚のベンチが置かれているというロマンチックな造りになっている。