この心臓が錆びるまで


「先輩はなんでそんなにカッコイイんですか」
「は?」


 自分はアホだ。いや、そんなことは随分昔から理解している。でも、こんな造りもののような端正な顔に見つめられてはこれを聞かずにはいられなかった。


「どんな親どうしで愛を育めば先輩みたいな人が出来るんでしょうか」
「俺を物みたいに言うな馬鹿」


 だってそうじゃない。どれだけ美人な奥さんとイケメンな旦那さんがあんなことこんなことをすれば、先輩みたいな超美形少年が産まれてくるというんだ。先輩は人類が産み出した傑作だと、真剣に思う。


「コウノトリさんが運んできたとか?」
「おまえ、うざい」


 笑いながら少しふざければ、先輩はそう吐き捨ててそっぽを向いてしまった。まあ、この感じは照れているのだろうけれど。

 でも、私は見逃さなかった。恥ずかしそうに一瞬細めた瞳の悲しい色を。それでも先輩はそっぽを向いて笑ってるだけで、これは気づかないほうがよかった、気づいてはいけないことだったのかもしれない。


< 8 / 60 >

この作品をシェア

pagetop