あの暑い 夏の記憶
重たい口元が開いたのが水面から伺えた。
「……好きだよ」
「…ほんとに!?」
わたしは葵ねぇの顔を見上げた。
すると口角を上げ、優しく微笑み頷いた。
耕にぃは葵ねぇを好きだって言い。
葵ねぇも耕にぃが好きだと言った。
やっぱり、耕にぃと葵ねぇは好き合っていたんだ。
それが嬉しいはずなのに。
でも、なぜか…。
胸騒ぎがした。
ズキンッ…。
胸の中がざわついていて。
温泉を上がったあと、ラーメンを食べに行った時も。
眠り込む前も。
畑にいる時も。
葵ねぇと耕にぃがニコニコしていても。
不安を覚え、心配でならなかった。
大丈夫だよね?
葵ねぇの好きと。耕にぃの好きも…、本物だよね?