あの暑い 夏の記憶
「んじゃー、出たらここで待ってなよ!」
「わかったよ!」
「いいんだよー、こっち来ても?」
「うるせ~よ!!」
また赤ら顔をして、走って男湯へ逃げ去った。
「アハハッ!」
「葵ねぇ!いじめたら日夏かわいそー」
「あれれー?心音は日夏が嫌いなんじゃなかったのー?小さい頃、よく泣いて帰って来ては日夏にいじめられたって言ってなかった?」
葵ねぇの声が浴場に響く。
「…そうだけど…」
と、言葉を詰まらせる。
「…だけど?」
「…わかんない!」
「ふふっ。わかんないかー…?」
「…何か。…今までの日夏が日夏じゃなくなって。…何か、…知らない男の子みたいなんだもん…」
わたしは口ごもりながら話。
「んー。私もそういう時あったなー。懐かしい」
葵ねぇは、浴槽の湯を両手にすくいながら、遠くを見つめる。
「葵ねぇも。…そういうの、…あったの!?」
わたしが、びっくりした顔をしたから、葵ねぇも目を大きくする。