あの暑い 夏の記憶

目の前に運び込まれる、料理が置かれた御膳を、凝視する日夏の顔は。

早く食べたい!と、訴えかけているみたい。



お風呂から上がった葵ねぇとわたしは、待ちくたびれている日夏を見つけた。


『お腹空いたよ~っ!』

と、せがむ日夏に。


『部屋に帰ればご飯だよ』

その葵ねぇの笑い声に、跳びはねたことを。


思い出し笑った。



「いただきまーす!!」


ホタテの炊き込みご飯に、エビやヒラメのお刺身。
カニにウニ。
サイコロステーキ。


たくさんの料理をパクパク頬張るわたしたちを。


「アハハッ!料理は逃げて行かないから、ゆっくり食べな」

葵ねぇは笑い飛ばした。


「うめ~っ!葵ねぇの唐揚げも!このカニも!!」

カニの足を持ち貪りながら、日夏はさりげなく言うと。


「…それなら。連れて来た甲斐があったよ」

葵ねぇは、本当に嬉しそうにはにかんでいた。


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