あの暑い 夏の記憶
あんなにたくさんの料理を、一瞬にして平らげたわたしと日夏は。
葵ねぇが2度目の温泉に入りに行ったから、窓に駆け寄り札幌の夜景を見渡していた。
「キレイだね…」
「あぁ…」
わたしは窓を開けてバルコニーに出ると、日夏もその後を着いて来た。
「…あんなに動いている人たちがいるってことだよね?」
「そうだな…すげ~な…札幌って。オレ…札幌のこと…何も知らなかった。ただすげ~とこなんだって思ってた」
「…うん」
「葵ねぇに感謝しないとな?」
日夏は、照れ笑いを隠す様に身を乗り出した。
「うん!」
わたしは、それに答える様に力強く頷いた。
輝く光に、引き込まれそうになる感覚を覚え息を潜める。
いつまでも飽きないその景色は、言葉では表せられない。
この街の人々の、それぞれの様々な想いを、代わりに輝き放ちながら。
夜が更けていくかのようだった。