あの暑い 夏の記憶
9.2日目
葵ねぇの携帯電話が、朝6時きっかりに鳴り響く。
何事だ!!と、飛び起きた日夏は次の瞬間、またフカフカの布団に体を預ける。
「ごめん、ごめん!目覚ましだよ」
焦りながら携帯を弄る。
「…だ~っ!さては…、葵ねぇ…、天然かっ!?」
「ふふっ…。日夏知らなかったのー」
わたしは布団の間から顔を覗かせる。
「…耕にぃから電話とかさ~。…メールとかなかったわけ?」
「…!」
顔を曇らせる葵ねぇは、一瞬しまった…。と、いうような表情をした。
それを見逃さなかった日夏は、葵ねぇに詰め寄る。
「その顔は…っ!何だって?耕にぃ何だって!?」
「何でもない!…何、心音まで!?」
明らかに動揺している葵ねぇの顔がおかしかった。
「ヘヘッ…。だってー」
観念して口を開く。
「…気をつけて帰って来い」
「は!?」
「え!?…それだけー?」
「それだけです!」
そう突っぱねて言い切られたわたしたちは、また枕に頭を置いた。