あの暑い 夏の記憶
すっかり目が冴えてしまったわたしたちは、朝早くから温泉に浸かる。
露天風呂から見える山々に、朝日が照らされて行く。
「ふぁー…気持ちー」
温泉が好きな葵ねぇは、岩場に持たれかかりユラユラと体を浮かす。
誰もいない浴場は、シーンと静まり返り、わたしや葵ねぇが動く度にポチャーンと、お湯が跳ね返る音だけがこだまする。
「朝ご飯は部屋食じゃなくバイキングだよ!」
「…バイキング!?何それー!!」
「んー…。たくさんテーブルに並べられた料理を好きなだけ取るの」
「わーい!」
バイキングって楽しそう!
どんな料理があんのかなー!
きっと日夏なんて、目を大きくして騒ぐんだろうな。
食堂までの道のりを。
「オレ一人だったからたくさん泳いだぜ!!」
日夏は、手をばたつかせながら話して聞かせる。
「心音、日夏に泳ぎ教えてもらいな?」
「いいぜ!特別に教えてやる!!」
「泳げなくていい…」
憎たらしそうに、冷ややかな視線を送った。