あの暑い 夏の記憶
わたしたちは見回りながら、日夏んちの家の裏にまで来ていた。
日夏の休もうぜ!と、一言残し、自分んちに姿を消した。
カッパを脱ぎ捨て家の中に入ると、日夏パパがソファーに横になっていた。
気まずそうに、テレビを見ている日夏パパに。
「父さんも…今日、来るんだろ?」
日夏が重たい口を開く。
「あぁ…」
相変わらず、日夏の方を見ない日夏パパ。
「これ…」
「どうした?」
「バイト代で買ったんだ!」
「…そうか。これからはバイト代は自分の好きなもん買えな」
日夏が出して来た、縦長の箱。
お土産屋さんで悩んで決めた日本酒の瓶。
それは、日夏パパの手で食器棚に飾られた。
「もったいなくて飲めないな…」
そう、ボソッと呟いた。
「じゃ…、畑戻る」
と、日夏は何だか、がっかりしていた。
「…喜んでくれると思ったのに」
そう肩を落とし、寂しく背中を丸め長靴を履いた。
日夏…。
日夏パパ…、喜んでくれてるよきっと…。
そう思うのにわたしは日夏に言えなかった。