あの暑い 夏の記憶
挨拶を済ませたわたしたちは、厩舎へと導かれた。
棒状の檻の中で馬が20頭、1頭ずつ大人しくしている。
各馬の横には名前と親馬の名前に生まれた日が書かれたプレートが掲げられている。
迫力のある胴体に細い足、クリッと丸い瞳に圧倒されていたわたしたちに、厩舎で休憩していたおじさんが。
「どうだい?綺麗だろ?」
と、話しかけてきた。
外から漏れる太陽の日差しに、黒く輝くその背中はおじさんの言うように、確かにキレイだった。
「でっけ~な!!」
「うん!!すごーい」
「かわいーね!!」
家が牧場だからか、準くんは。
「かわいいかも知れないけれど、牧場主から見たら商品だから。かわいいなんて言ってられないよ」
苦笑いを浮かべた。
「そうだね。馬を生ませて2歳までここで育てるのがおじさんたちのお仕事だからね。この馬たちを誰かに買ってもらわないと話にならないんだよ」
それに答えるように、おじさんが馬を見つめながらそう言った。