あの暑い 夏の記憶

挨拶を済ませたわたしたちは、厩舎へと導かれた。


棒状の檻の中で馬が20頭、1頭ずつ大人しくしている。

各馬の横には名前と親馬の名前に生まれた日が書かれたプレートが掲げられている。


迫力のある胴体に細い足、クリッと丸い瞳に圧倒されていたわたしたちに、厩舎で休憩していたおじさんが。

「どうだい?綺麗だろ?」

と、話しかけてきた。


外から漏れる太陽の日差しに、黒く輝くその背中はおじさんの言うように、確かにキレイだった。


「でっけ~な!!」


「うん!!すごーい」


「かわいーね!!」


家が牧場だからか、準くんは。

「かわいいかも知れないけれど、牧場主から見たら商品だから。かわいいなんて言ってられないよ」

苦笑いを浮かべた。


「そうだね。馬を生ませて2歳までここで育てるのがおじさんたちのお仕事だからね。この馬たちを誰かに買ってもらわないと話にならないんだよ」

それに答えるように、おじさんが馬を見つめながらそう言った。

 
< 198 / 358 >

この作品をシェア

pagetop