あの暑い 夏の記憶
「ちびちび食いやがって!ところで、…心音からプレゼント貰ってね~な~…」
物欲しそうにわたしの顔を見つめる。
「…ないよ!!」
「はぁ!?」
力を込めて言い切られた日夏は、何とも言えない顔でわたしを見る。
「ないもーん!」
「何だよ~っ!楽しみにしてたのによ~っ」
さもがっかりしたように背中を丸めた。
…ないよ、プレゼントなんて。
せっかく葵ねぇに教えてもらって作った、革のミサンガは。
葵ねぇのキレイな仕上がりとは違って。
ヨレヨレでくたっとしていたから。
こんなのプレゼントなんて…。
言えないよ。
喜ばれないなら、あげない方がいいもん。
ポケットの中に忍ばせてある、それは。
渡すことができなかった。