あの暑い 夏の記憶
準くんが困ったように話し出した。
「…うちにもいたよ。なんて言うか、…手癖悪いの。でも、結局みんな聞き出せなくて。…うやみやになった。だから、そこまでして…、みんな必死なんですよね。うらやましいな…」
「本当にごめんなさい…。他にもやり方はあったかも知れないけれど。
働きもせず、お給料は出せないから…、決定的な何かが必要だったのよ…。卑劣なやり方でごめんなさいね」
旭ママは土下座までして謝ってくれた。
それを見た葵ねぇが素早く駆け寄って、旭ママを起こそうと抱き抱えた。
「ちょっ…、やめて…。…うっ…」
顔をしかめ、口元を手で覆い隠し、洗面所まで走って行って。
「…っ。…うっ」
激しく嘔吐した。
耕にぃが葵ねぇの元へ歩いて行った後。
「…葵ねぇ…。ずっと何も食べないんだよ…。サラダばっかりだったんだよ…。ねぇ!?どっか悪いの!?」
わたしは旭ママと、耕にぃママの体を揺らした。
旭ママも耕にぃママも顔を見合わせ、ハッとした表情をした。