あの暑い 夏の記憶
15.証
次の日の夕方、1台の黒い大きな車が農道を登って来た。
この先には、農家や牧場しかないから、一般車なんてほとんど通らない。
見慣れない車は、旭んちの前でスピードを落として、止まった。
「何だべ?」
わたしと日夏は、とうきび畑の隙間から、その車に釘つけ。
一人が助手席から降りて来て、旭ママと話してる。
「…あれ?…おじいちゃんにおばあちゃんみたい」
「葵ねぇの親か?…ほんとだ!!」
すると、車はこの先に上がって行った。
おじいちゃんたち…?
葵ねぇに会いに来たのかな…。
『里田葵はどこにいますか?』
って尋ねられたけれど…教えない方がよかったかしら…?
と、わたしに教えてくれた旭ママ。
連れ戻しに来たわけじゃないわよね…?
と、わたしの家の先を見た。
「…行ってみようぜ!」
「うん…」
日夏に吊られて、走って家まで向かう。
旭ママの言う通り、ほんとに…連れ戻しに来たのかな…。