あの暑い 夏の記憶
葵ねぇは、おじいちゃんが決めた相手と、結婚させられるのが嫌で家を出た。って、耕にぃが言ってた。
だから、勝手なのはおじいちゃんだと思う。
「まぁ、いいのよ。…今はそんなことより…。耕毅さんは…どう考えているのかしら?」
と、おばあちゃんがおじいちゃんを宥め、耕にぃに向き直る。
「…できれば結婚して、子供生んでもらいたいです。もちろんここで一緒に…。でも、決めるのは彼女ですから。待ちますよ、もう何年も待ちましたから」
耕にぃは、そう悲しそうに微笑んだ。
「あなたはどうなの?」
おばあちゃんは葵ねぇに聞いた。
「まだわからない…」
そう答えるとそっぽを向いた。
「わからないって…。あなた、そんな曖昧で…。耕毅さんのご両親にも迷惑かけて。それなら札幌に戻って考えてみてもいいじゃない?」
「それだけは嫌」
葵ねぇはきっぱりと言い切った。
おばあちゃんも、おじいちゃんも葵ねぇを名前で呼ばない。
家族なのに…。
葵ねぇがかわいそう。