あの暑い 夏の記憶
目が覚めると、すでに朝日が昇っていて、カーテン越しの陽の光が眩しかった。
台所から、ジューッ。って、卵の香ばしい香りが漂ってきて、わたしのお腹はグルルと、騒ぎ立てる。
おばあちゃんが作る朝ごはんは、葵ねぇと同じだった。
白いご飯に、あったかいお味噌汁。
卵焼きに焼き魚。
卵焼きもいつもの葵ねぇのと一緒で、とっても甘かった。
「昨日の唐揚げも、この卵焼きも。葵ねぇと同じ味がするね?」
何気なく葵ねぇに聞いたのに、知らんぷりされてそれに答えてはくれなかった。
だけど、おばあちゃんは何だか機嫌が良さそうに『お弁当作るわね』って、唐揚げを作り出したんだ。
葵ねぇはサラダを食べ終わった後、油の匂いがキツイ。って、布団に横たわる。
おばあちゃんが布団を畳みながら。
「原西さんの所に挨拶してから帰るわね?」
と、寝ている葵ねぇに聞こえるように、声を張り上げる。
やっぱり、葵ねぇからの返事はなかった。