あの暑い 夏の記憶
「2人の門出に…格式張ったことはできませんが…また日を改めて挨拶に参ります」
と、おじいちゃんの表情の固いままだった。
耕にぃは、目を大きく見開いて驚いていて。
耕にぃママは、目を輝かせで口元を緩める。
「私たちが…あの子を追いやったせいで…今まで色々とご迷惑をおかけしました。私たちにとって唯一の娘ですので…。これからもどうか…よろしくお願いします…」
涙声で頭を深々と下げたおばあちゃん。
「…こちらこそよろしくお願いします」
耕にぃママも習って首を地面に向けた。
挨拶が済んだ、おばあちゃんとおじいちゃんは『もう札幌に帰るよ』と、言うので見送るために家に戻る。
耕にぃと耕にぃママも、わざわざ広じぃもトラクターから降りて来て。
それなのに、寝ているはずの葵ねぇは家の中にはいなかった。
「…葵ねぇ!?」
不安になったわたしは辺りを見回しながら大きな声で葵ねぇを呼ぶ。
「あの子…どこ行ったのかしら…」
全員の顔が青色に変わる。