あの暑い 夏の記憶
みんなの頭の中で不安が過ぎった時。
日夏が畑からひょこっと姿を現した。
「…あ~っ!!みんな何してんだよ?」
わたしたちに指を差す。
「日夏こそ…何してんの?」
わたしは思わず眉が寄った。
「葵ねぇに言われて野菜採ってんだよっ」
「…へ?」
「何だよ…?」
わたしも日夏も変な顔をし合う。
日夏のところまで駆け寄ると。
家の裏の畑でとうきびを腕の中に抱いた葵ねぇを見つけた。
葵ねぇと日夏によって、採れたての野菜たちが無言で肥料袋に移された。
「…ここの野菜、食べたことないでしょ?」
と、葵ねぇはおじいちゃんの車のトランクに押し詰めた。
「あと、これ!母さんが昆布持って行きなって。オレの父さんが作ったヤツ」
日夏は、干した昆布がぎっしり詰まったビニール袋を、おばあちゃんに差し出した。
「ありがとうね。お母さんにお礼しなきゃ…」
「いいよそんなの!母さんはお節介が好きなだけなんだ~」
って、日夏は笑う。