あの暑い 夏の記憶

みんなの頭の中で不安が過ぎった時。

日夏が畑からひょこっと姿を現した。


「…あ~っ!!みんな何してんだよ?」

わたしたちに指を差す。


「日夏こそ…何してんの?」

わたしは思わず眉が寄った。


「葵ねぇに言われて野菜採ってんだよっ」


「…へ?」


「何だよ…?」

わたしも日夏も変な顔をし合う。


日夏のところまで駆け寄ると。

家の裏の畑でとうきびを腕の中に抱いた葵ねぇを見つけた。


葵ねぇと日夏によって、採れたての野菜たちが無言で肥料袋に移された。



「…ここの野菜、食べたことないでしょ?」

と、葵ねぇはおじいちゃんの車のトランクに押し詰めた。


「あと、これ!母さんが昆布持って行きなって。オレの父さんが作ったヤツ」

日夏は、干した昆布がぎっしり詰まったビニール袋を、おばあちゃんに差し出した。


「ありがとうね。お母さんにお礼しなきゃ…」


「いいよそんなの!母さんはお節介が好きなだけなんだ~」

って、日夏は笑う。
 
 
< 296 / 358 >

この作品をシェア

pagetop