あの暑い 夏の記憶
軽トラックはそのまま走り、500m離れた隣の家の前。
遠くからでもわかる空と同じ色の青いTシャツを着た日夏(ニチカ)は、すでに外で待っていた。
日夏の家の砂利道はガタガタと軽トラを揺さぶるから嫌いだ。
「おばちゃん!耕にぃ!おは~!」
「おはよう日夏っ!こらっ!!おばちゃんじゃないだろぉ!」
「ばばぁじゃん。昨日軽トラから降りるとき落ちたじゃ~ん。ばばぁの証拠~!」
べぇーっと憎たらしげに舌を出して日夏が葵ねぇを挑発。
「なにぉ~!待てコラー!」
「年なんだからやめとけよぉ~」
また今日も日夏と葵ねぇの追いかけっこ。
「何してるのあんたはっ!はいはい!日夏ほらっ!帽子!」
日夏ママが慌ただしく走って家から出てくる。
今日も日夏は騒々しく軽トラに乗り込んだ。
「じゃ耕毅くん、お願いね」
日夏ママが手を振る。
「はい、安全運転で。お任せ下さいなっ」
そうしてまた、ガタガタと揺れながら、軽トラは発進した。