あの暑い 夏の記憶

聞き返したわたしは、花火から旭の横顔に目を移す。


「…心音もにっちもおにぃも好きだけど、その好きじゃなくて…。違う“好き”なんだ…。
笑えるよね!小学生だしっ!相手は高校生だし…5歳も年上なのにさ…!
嘘つくつもりなんて…なかったんだけど。お兄ちゃん…なんて思えないんだ…」

と、力なくおかしそうに笑って見せた。



わたしは、そうやって俯いている旭に、何て言っていいのかわからなくて。


誰かを真剣に想い、“好き”だなんて言える旭がうらやましいとさえ感じた。


黙っていたわたしに。

「心音…ごめん…」

って、旭が笑顔を見せてくれたから。


「…本当のこと…言ってくれてありがとう」

と、わたしも微笑むしかできなかった。



きっとわたしは、“好き”とか“恋”とかは…。

まだずっと先なんだろうな…。


ドキドキして、その人しか考えられなくて…。


本当にそんなことがあるのかさえも、不思議な気分だった。


< 306 / 358 >

この作品をシェア

pagetop