あの暑い 夏の記憶
聞き返したわたしは、花火から旭の横顔に目を移す。
「…心音もにっちもおにぃも好きだけど、その好きじゃなくて…。違う“好き”なんだ…。
笑えるよね!小学生だしっ!相手は高校生だし…5歳も年上なのにさ…!
嘘つくつもりなんて…なかったんだけど。お兄ちゃん…なんて思えないんだ…」
と、力なくおかしそうに笑って見せた。
わたしは、そうやって俯いている旭に、何て言っていいのかわからなくて。
誰かを真剣に想い、“好き”だなんて言える旭がうらやましいとさえ感じた。
黙っていたわたしに。
「心音…ごめん…」
って、旭が笑顔を見せてくれたから。
「…本当のこと…言ってくれてありがとう」
と、わたしも微笑むしかできなかった。
きっとわたしは、“好き”とか“恋”とかは…。
まだずっと先なんだろうな…。
ドキドキして、その人しか考えられなくて…。
本当にそんなことがあるのかさえも、不思議な気分だった。