あの暑い 夏の記憶
それから、旭もわたしも高く上がる。
次から次へと、真っ暗な空中に浮かびあがるカラフルな花火の迫力に。
わたしたちは口を開け放したまま、歓喜の目を見開いていた。
5000発もの数の花火がたった1時間で打ち上げられるんだよ。と、話す耕にぃの瞳にも丸い円がはっきりと映る。
気づかない間に、車から降りて来た葵ねぇが後ろに来て。
「口開けてたら虫が入ってくるぞ?」
と、わたしの背中にその体温をくっつけ、腕を掴まえた。
わたしもその腕を掴み返し。
「…葵ねぇ、ありがとう!」
と、笑って言った。
「連れてくって約束したからねー。約束破ったら日夏に怒られるしょ」
そう笑い返す葵ねぇの目の奥でも、キレイな花火が映し出されているのかな。
いつだって、葵ねぇは小さな約束でも守ってくれた。
だから、『来年みんなで来よう』って言ってくれて。
またみんなと一緒に来れるって、思ったら嬉しくなったんだ。
みんなと一緒に…。
そんな当たり前のことが、嬉しかった。