あの暑い 夏の記憶
絶対だぜい!
と、騒ぎ立てる日夏に。
葵ねぇはうんざり顔で。
「…あんたとの約束事が多いから忘れちゃうわ」
唐揚げでしょー。札幌雪まつりに、花火に。クリスマスにケーキと、指を折って数えあげる。
「心音だって、わけのわかんね~こと約束させんだぜっ」
約束…?
何かしたっけ…?
「…へ?」
わたしは日夏を見た。
「やめろってその顔っ!」
人の顔を見て、手を叩いて思いっきり笑う。
何の約束かわからなくて、わたしは変な顔をしていた。
「へー?何を約束したのー?」
好奇心丸出しで葵ねぇは後ろを振り向いた。
「葵ねぇには教えないもーんっ」
わたしの口調を真似した日夏は、窓の方を向いた。
「何よー?日夏もいっちょ前に隠し事か?」
「うるせ~なっ!そんなことよりっ!!絶対だかんなっ!」
「はいはい。顔が真っ赤だよー」
葵ねぇは日夏をからかって。
ムキになる日夏に。
葵ねぇと一緒にバカにする旭。
帰りの車内も、ずっと笑い声が鳴り止まなかった。