あの暑い 夏の記憶

せっせと、口をもぐもぐさせて、さっさと食べ終えた日夏はまた、扇風機の前でゴロンとしていた。


「…日夏だけ風当たってずるい」


「心音がモタモタ食ってるのが悪いんじゃんかっ」


「…日夏が食べるの早いんだもんっ」

ムカッとして、負けじと口に箸を運ぶ。


「…おっせ~」

わたしが食べているのを見てバカにする。


「よく噛んで食べなさいって言ってたもん!」


「言ってないもんっ!」


日夏はわたしの真似をよくするようになって、そのバカにした感じがすごく腹が立つんだ。


そうやって言い合ってるから、わたしのご飯を食べるペースが益々遅くなる。


「心音は食べるの遅いんだもーんっ」


フンッと。わたしは、日夏に背中を向けて口に駆け込む。



トゥルルルル、トゥルルルル…。

小屋の電話が鳴って日夏ママがそれに応えた。


「…はい、そうですが?はい、そうです。…えぇ!?は、はいっ。それで?…集中治療室!?はいっ、わかりましたすぐ行きます」
 
 
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