あの暑い 夏の記憶
何か言われたわけでもないのに。
ズキンズキンと激しく打ち付ける胸の痛みに、耐えられなかった。
話しかけて、名前を呼んでおきながら、本当はその反応が怖くて堪らなくて。
もう、これ以上…。
嫌われたくなくて。
もう、これ以上…。
言われたくなくて。
今、何か言われたら…。
堪え続けたものが溢れ出しそうだった。
『触んなっ!!…心音なんか…大嫌いだっ!!』
そればかりが、繰り返し、繰り返し頭の中で言われていて。
走っても、走っても、どんなに撒いて、振り払おうとしても。
その言葉だけは追い付いて来て。
ぐちゃぐちゃに掻き乱されて、おかしくなりそうになる。