あの暑い 夏の記憶

「あのー…」


「アハハッ。何だよ、あのーって他人みたいじゃんかよっ!」
と、再びバカ笑いした。


「ち、違うもんっ!何なの…さっきから笑ってばっかりっ」

膨らませた頬っぺを、プニッと摘まれ。


「…最後くらい笑ってようって思ったんだ」

笑顔を作って、歯を見せた。


「…最後なんて…言われたら…何も…言えないよ」

目線を下に向けた。


「何だよ?最後だから全部聞いてやるよっ!言えよっ」

と、明るい声を出す。


「…バカっ!アホ!マヌケだし、人のお弁当食べるしっ!無神経だしっ。仕事しないしっ、イタズラばっかして、うるさくて…ムカつくっ…!」

ありとあらゆる悪口を、まくし立てる。


それなのに。

「…いきなりそれかよっ!」

って、笑い飛ばすんだ。


歯を食いしばり、次言う言葉を探してみた。



日夏はずるいよ…。


そうやって…笑顔向けられたら。



本当に、何も言えないよ。
 
 
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