あの暑い 夏の記憶
「…こっちの…高校?」
「…そっ。って…落ちたらシャレにならんから勉強する!…だから…一緒に…通えたらいいな~って。…約束はそれまで保留なっ…?」
わたしの顔の前に、ニカッと笑う日夏の瞳が近づいてきて。
目尻に溜まった涙の粒に、親指を擦り合わせ、泣き虫って言うと。
優しい顔をして微笑んだ。
「しばしの別れだかんな…絶対…また戻ってくるから…」
目に焼き付けるかのように、波打つ海を眺める。
耕にぃの待つ2号へ、わたしと日夏は並んで歩いた。
「耕にぃ!オレがいなくて寂しいかもしんね~けどっ。しばしの別れだかんなっ!」
「…日夏、ほーんと寂しくなるな…」
「そんなしみじみしやがってよ!とか言って、耕にぃには葵ねぇがいるもんな?」
「アハハ。相変わらずだな!…日夏?元気でな」
「耕にぃもなっ。…心音もな?」
「うん…日夏もね」
「泣くなよっ」
「泣かないよ!」
日夏は最後に、みんなに会いたかったな~って呟いた。