あの暑い 夏の記憶
「じゃあな!耕にぃ、もう行っていいぜっ…仕事だもんな…」
少しずつ小さくなっていく、左腕を振り続ける日夏の姿に。
身を乗り出して、左腕を振り返す。
揺れ動く、手首の鎖に。
『泣くなよっ』って言った時の日夏の顔が浮かんでくる。
最後に見せた日夏の、今にも泣き出さなんばかりの表情。
日夏?
泣かないよって言ったけど。
何だか無理そうだよ…。
姿が見えなくなっても、霞んでいく海の方向を追いかける。
滲む視界に、日夏の笑顔だけが過ぎって流れて行く。
うん…。
しばしの別れだよ。
でも…。
とっても…長いよ…?
でも…。
待ってるから。