あの暑い 夏の記憶
“ウ゛~ウ゛~”
「心音ーっ!!」
外で耕にぃの呼ぶ声に応える。
「はぁーいっ!!」
「忘れ物ないか?」
「うん。ないよーっ」
「よぉ~し、しゅっぱ~つっ!!」
耕にぃの2号は風を切って走る。
日夏の家を素通りし、旭の家へと向かう。
…日夏。
誰もいない、生活感のない日夏の家は寂しそうで。
本当にもういないんだと気づかされる。
こうして見ると…。
『心音ーっ!耕にぃーっ!』
って、騒がしく飛び込んで来る日夏。
本当にいないんだ…。
日夏がいなくなった次の日。
新学期が始まった。
わたしの生活の中から、すっぽりと抜け落ちた日夏の存在。
日夏…。
日夏がいなくなったから、わたしのお弁当は一人分に減ったよ…。
日夏がいなくなったから、すごく静かな朝だよ。
昼も夜も、学校でも、畑でも。
日夏がいないから寂しいよ。