あの暑い 夏の記憶
「…大丈夫じゃないって。…大丈夫じゃないのに、大丈夫!って言うの…、昔からだよな…」
心配そうに葵ねぇの顔を覗き込んだ。
葵ねぇは下を向いてこう言った。
「…耕ちゃんもじゃん。人のことよく見てるよね…。私なら大丈夫だよ!」
「…ふぅー…。全然大丈夫じゃない!今日の作業は終わり!もう帰ってヨシ!そんな状態で大丈夫なわけない!」
また一つ溜め息をつきながら、耕にぃは葵ねぇの手を握る。
「大丈夫だって言ってるのに…」
拗ねた様子で答える。
「意地っ張り…」
それでも手を握ったまま、葵ねぇのことを見つめる耕にぃの顔は真剣で。
心臓がドキッと脈打った。
そんな耕にぃ…わたしは初めて見た。
そして、いつもの強気な葵ねぇがこんなに潮らしいのも。
…初めて見た。
「そんなんじゃ何もできないし…今日はうちに泊まったら?」