あの暑い 夏の記憶
下駄箱で靴を履き替えながら、日夏は頷いた。
「やっぱ…葵ねぇと耕にぃ怪しい!」
「またそれー?昨日も言ってたよ」
旭はうんざり顔をしている。
「絶対怪しい!耕にぃも趣味わりぃな~っ!あんな口悪くて威勢のいい男女のどこがいいんだよ~!耕にぃならもっといい女いるって~」
「あーっ!おねぇに言ってやろー」
「あっ、旭それだけは…やめてくれよぉ!絶対殴られるべや」
「おねぇに言うもんねー」
旭は葵ねぇのことを“おねぇ”って呼ぶ。
日夏がそれを『おねぇだって~!オカマみたいだ』と大笑いして言ったことがあった。
やっぱり葵ねぇに追いかけられて殴られていた。
何度も追いかけられては殴られているのに、全然懲りない日夏を見ていると…、バカなんだなぁって、今頃気づいたよ。
「これだから女子っておしゃべりでやなんだよな~」
「これだから男子は子供っぽいからやなんだよねー」
またしても2人の言い争いが始まった。こういうときは知らないふりをするのが一番なんだって。耕にぃが言ってた。