あの暑い 夏の記憶
わたしたち“子供”は、そんな大人たちの譲れない口論に入り込めないと悟って、トランプで“ババ抜き”を始めた。
…言い出したのは、もちろん日夏なんだけど!
「準ちゃんの家は何してるの?」
「うちは隣町で酪農、牛飼ってんだよ。でも、うちもバイト雇ってるし。自分んち手伝いしてもお小遣になんないしさ。それなら他で…、あっ…!」
「わー!準ちゃんババだーっ!」
「くそっー!心音ちゃんずるいよ…」
「じゃあ、…準にぃも将来は家継ぐんか?」
「兄貴いるからどうかな。一応農高だけど。みんなも継ぐんだろ?」
「い~や!俺は札幌に行く!」
「へぇー。札幌で何やるの?」
「…それは…まだっ…!」
「…!アハハ!ゆっくり決めるといいよ」
すっかり打ち解けた準ちゃんの笑った表情が、なんだか雰囲気が耕にぃに似ていた。
「あんたたち何してるの?」
声が振り落とされる上を、恐る恐る見上げると、怖い顔をした日夏ママと旭ママがいた。
「バ…。あ~いや~。じ、ジジ抜きだい!行くぜい!」
ババヌキとは言えない日夏と旭は一目散へと出て行った。