あの暑い 夏の記憶
わたしは日夏の頭の近くでひたすら。
「海ー!昆布!わーい!!」
飛びはね続ける。
「…心音~!わ~った。わかったから…。オレは眠いんだよ~っ。今度連れてってもらおうな?母さんに言っとくから…」
座布団に顔を埋め、力なく言った。
「ほ、ほんとにっ?日夏!?ほんと!?ほんとーに?にーちか!」
日夏の背中のTシャツの裾を引っ張る。
バッと起き上がり、わたしの方を向く。
「…あ~っ!わかったから、引っ張んじゃね~よっ!」
と、わたしの腕を突き放す。
その時、フワッと海の匂いがした気がした。
ブォーブォー…ブォーン…
外からの機械音に。
「あー!耕にぃかな!?」
わたしと日夏は帽子を深く被り、慌てて靴を履いて飛び出した。
「…雑草取りして来てよ!!」
葵ねぇが目吊り上げたのを、チラッとだけ見て。
「わかったー!」
適当に返事をして、走り始めた。