あの暑い 夏の記憶
すっかり日夏はいつもの、あの調子の良さを取り戻し…。
また小屋の中だけ騒がしくなった。
日夏が“熱中症”で倒れて2日が経った。
7月26日。
今日はわたしの11歳になる、楽しい誕生日のハズが…。
「ほらっ!どこみてんの、それっ早くやっちゃいな!」
「べ、別になんも見てね~よっ!葵ねぇがうるせ~から集中できね~の!」
と、日夏は目を泳がせ、また葵ねぇに目を置いた。
「へー!これは?…あー!そうなんだ!じゃこれは?」
キャッキャッと、トーンが上がる葵ねぇ。
葵ねぇはなにやら、直さんが持ち運んだアルバムを楽しそうに見ていた。
ハイペースで忙しいかった農作業が、日夏が倒れてからちょっとだけ、ゆっくりできるようになって。
みんなが感謝したくらいだった。
準ちゃんは8月いっぱい。
直さんは冬まで。
それぞれ旭んちに住み込みで働くことが決まった。
わたしは何だか複雑だった。
「あのスケベヤロ~は冬までいやがんのか~っ!」
日夏はあたかも面白くなさそうに、わたしの気持ちを代弁してくれた。