砂漠の月歌 〜dream story〜

09 涙の貴方に告白を





「……そんな事言うな…」


消え入りそうな声で言う娘に、王子は呟くように言った。



「そんな悲しい事、言うな…」


気づけば王子は、娘よりも悲しそうな顔をしていた。



「貴方が俺に言ったんだぞ…?
貴方は貴方のままでいい、と…

だから、俺は此処にいるんだ…」


そう言って、娘が握っている剣の刃先をグッ…と掴んで抑える。



「落ち着け…、」


王子の手から流れる血が刃先を伝う。



「怒っていいんだ…。
自分の親が殺されたと知ったら怒るのは、
当たり前の感情だ。

だったら…、
貴方も貴方のままでいいんじゃないか…?」


そう言って、目に涙を溜める娘に優しく微笑む。



「……どんなに
心が苦しみや憎しみで埋め尽くされても、
いつか…、
それを受け止められるようになるから…

だって俺がそうだからな…。」



「……王子…」



「それでもまだ…
まだ受け止められない部分があるなら、
俺もそれを一緒に背負ってやる…。」


まだこんな自分に笑いかけてくれた王子に、娘の頬に一筋の涙が伝う。
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