砂漠の月歌 〜dream story〜
娘からそんな事を聞かれるなど夢にも思わなかったようで、王子は素直に嬉しかった。
「…!!」
表情は前髪に隠れて見えないが、頬がほんのり染まっているのは分かった。
そんな娘を暫く横で見つめると、王子も街の方に顔を向けて呟くように言う。
「……そうだな…。
では…その約束の項目に
一つ増やしておいてくれるか?」
その後、王子は真剣な表情で娘の耳元に顔を近づけ、そしてそっと囁いた。
「━━━“永遠(とわ)に守る”と…。」
娘が振り返るその瞬間、王子は娘の頬に手を添え、唇を重ね合わせる。
「…!!」
娘は咄嗟の事で目を見開いたが、一度唇から離れた時、王子は優しく微笑んでいた。
「……好きだ…。」
そう言って綺麗に笑う王子に、娘は出会った最初から惹かれていたのだ。
だから娘も身を任せて言った。
「……私も、好き…大好き…。」
今度は娘から王子を抱き締める。
そしてどちらからともなく、もう一度、ゆっくり唇を重ね合わした。
……二人は幸せそうに微笑み合い、幼い少年と少女の面影が重なる。
まるで湖で約束を交わしたあの頃まで、時間が戻ったように━━━……。
Fin.