砂漠の月歌 〜dream story〜
大広間へ続く赤絨毯を敷かれた長い通路を駆け抜けると、漸く一番奥の部屋に辿り着いた。
「あっ…」
「着いたなっ…」
どうやら一番奥の大きな扉を開いた先が大広間らしい。
「俺は訳あってこの扉からは
入れないから、貴方は此処から入れ」
そう言って掴んでいた手を離し、娘の背中をポンッ…と大広間の方へと押す。
「え、入らないんですか…?」
また娘の返事を聞かずに、今度は通路側の窓をこじ開けた。
「じゃ、俺は
これから少し用があるから、また後で…」
娘の方に一瞬振り返り、ふ…と微笑んだと思うと、軽やかに窓から飛び降りた。
「えっ…?あの此処最上階…」
しかし既に王子の姿は見当たらなかった。
(ま、良っか…。身軽そうだったし…)
先程の目の前で外壁から飛び降りて無傷で着地した事を思い出し、多分大事だろうと思う事にする。
(……それにまた後でって事は、
あの人も来るんだよね…。)
今はその言葉を信じ、娘は大広間の扉をゆっくりと開けた。