砂漠の月歌 〜dream story〜
04 舞踏会のひと時
ウエイトレスからワインを渡された娘はどうするか迷っていた。
(どうしよう…私まだ未成年なんだけど…)
どうやら間違われてワインを貰ってしまったらしい。
(そんなに
二十歳過ぎてるように見えるかな…?)
そんなズレた思考に向かっていた矢先、不意に後ろにいた街の人の会話が聞こえてきた。
「あれでまだ16歳とは…
随分としっかりしておられるな」
「えぇ…。きっと
国王陛下の血を濃く受け継いだんだわ」
聞くとそれは、王子と父である国王の事のようだった。
「国王様か…そう言えば、
今年も舞踏会に出席していなかったな…。」
「えぇ…。
まだお仕事が残っているらしくて
帰って来られないそうよ」
その会話に、少なからず娘は不思議に思った。
(え…?)
てっきり父である国王も出席していると思っていたのだ。
「お気の毒ね…せめて今日ぐらいは
舞踏会に出席なされば良いのに…」
「仕方ないだろ。
国王陛下は国を治められているのだからな。
たとえ王子の誕生日であっても、
滅多にお目にかかれないだろうな」