砂漠の月歌 〜dream story〜
まだ口元は笑みを浮かべているが、姐御は少し切ない表情になっていた。
「……街の者にこんな事を言うのは
間違ってると思うんだがね…、
今この国は絶望的なんだ…。
国王が亡き今、
何者かに狙わているのは王子なんだが、
当の本人は自覚してるのかしてないんだか…
多分自覚はしてるんだろうけどな」
何処か呆れたような口調だったが、僅かに表情は曇っている。
「国王が死んだと聞かされた時…
王子は泣かなかった。
もともとなくような性格じゃないがね…。」
姐御の話を、娘は黙って耳を傾ける。
「王子はね…
親ってものをあんまりよく知らないんだ…。
舞踏会ですら顔を出さなかった国王は勿論、
母上様は写真でしか知らない…
……でもまぁ、よくこんな環境で
捻くれた性格にならなかったなと思うよ」
しかしその後、姐御の表情から笑みがなくなる。
「でもその代わり…、
王子は人に本心を見せなくなってしまった」
娘は言葉が思い付かず、沈黙が暫く続いた。