砂漠の月歌 〜dream story〜
また、王子の頬に一筋、涙が流れる。
「……泣いたのなんて…
何年振り、だろうか…」
涙が流すその顔は、まるで舞踏会出会った時のように娘の瞳には綺麗に映った。
娘は目を見つめながら言った。
「皆…傍にいるよ…。
宮殿の執事さんや姐御さん、
メイドさん達や、街の人達…
……それから、私も…。」
最後の小さく囁くような言葉は、王子の耳に届いたのだろう。
「……ありがとう…。」
王子は僅かに微笑み、ゆっくり娘の肩に寄り掛かる。
娘も何も言わず受け入れ、娘も王子に身を任せる。
……そしてそのまま寄り添う二人は互いを見つめ、どちらからともなく、唇と唇をそっと重ね合わした。
━━━昔、湖で約束を交わした幼い少年と少女が、今の二人と重なって見えた━━━……。