砂漠の月歌 〜dream story〜
……自棄に目立つライトグリーン色の長髪に漆黒の瞳、ヨーロッパ貴族のような服装。
今思えば妖しい雰囲気を纏っていた事を鮮明に覚えている。
「何でもっと早く言わなかったんだい!!」
「知らなかったんだよ!!まさか
あの時から近くに潜んでたなんてよっ…」
言われてみればそうだ。敵が堂々と舞踏会に出席しているなど、夢にも思わないだろう。
姐御は小さく舌打ちをする。
「とにかく…、急いでこいつ探そうぜ!!
写真が手に入ったくらいだから、
情報手に入れるのも簡単だろ!?」
「……それがそうもいかないんだよ…」
苦虫を噛み潰したように言う姐御の言っている言葉の意味が分からなかった。
「もうとっくに
兵士達に写真を配って探させてるよ。
……だが、
こいつが舞踏会に来た痕跡が…
全部無くなってるんだ」
「何だってっ…!?」
姐御は手に持っていた写真をグシャッ…と握り締める。
「舞踏会に
誰が来たかチェックする名簿が盗まれていた…。
これじゃあ名前も知る事も出来ない…
写真は舞踏会の雰囲気を
国王に伝える為に撮ったもので、
たまたま
映り込んだだけなんだよ…」