砂漠の月歌 〜dream story〜
02 これが魅力
宮殿のフロアの衣装部屋で、舞踏会の為王子は着替えてネクタイを締め直していた。
(王子、か…)
先程執事に言われた言葉が頭に浮かぶ。
(まぁ、プレッシャーではないが…)
小さい頃からそう言い聞かされてきた事に、多少息が詰まる事もある。
今回のように。
(……考えても仕方ないな…)
小難しい事を考えるのは一旦中断して、衣装に着替えた王子は取り敢えず衣装部屋から出る。
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「食堂にお皿運ばなきゃね…。」
「えぇ」
大広間へ続く通路の両端に装飾されてある絵画やレリーフを十数人のメイド達が手入れしていると、衣装部屋の扉が開いた。
ガチャッ…という音に吊られ、反射的にメイド達は目を向ける。
━━━コツ…ッ…
━━━コツ…ッ…
━━━コツ…ッ…
「まぁっ…」
思わずメイド達は手入れに専念するのも忘れ、目を奪われてしまった。