砂漠の月歌 〜dream story〜
王子は真剣な顔つきで正門の方に立ち、その理由を説明しに入る。
「……これから、この宮殿にいる兵士達を
全員街に送り込み、優先的に街を死守しろ」
「「はっ!?」」
うっかり執事と姐御の二人、声を揃えて発してしまう。
「何だってっ…!?そんな事したら…」
突然執事は驚いた。そんな事をすれば、今宮殿はすぐにでも攻め込まれるのだから。
だが王子は続ける。
「分かっている。最後まで聞け…。
……一旦兵士達を街に送り込み、
がら空きになった
宮殿をわざと奴等に攻め込ませる。」
「へ?わざと…?」
思いもしなかった王子の提案に、執事は意図が分からなかった。
「そうか、その手があったのかっ…!!」
だが、勘が鋭い姐御は王子の戦略に気づいた。
「……そうだ。
無理に両方を守ろうとするから駄目なんだ…
狙いが分からないなら、誘い込めばいい。
奴等が宮殿に乗り込んで
逃げ場を封じた瞬間…こちらが攻め落とせ」
本領発揮といった所か、恐ろしく王子はこの短時間で敵の何手先も詠んでいた。
初めて知った王子の機転の良さには、執事達も思わず息を呑む。