砂漠の月歌 〜dream story〜
そう言って、眩しそうに宮殿をゆっくりと見上げる。
「……今まで見てこなかったせいで、
改めて色んな価値に気がついた俺は、
やはりまだこの宮殿の光すら眩しく感じる。
しかしいずれ俺も…、
この光をちゃんと受け入れられるように…
この光に並べるようになりたい、
そう思ったんだ…。」
真剣な王子の言葉を、静かに聞き入れる。
「だから今この宮殿は…
俺にとって、大切なものの一部なんだ…。
お前達を巻き添えにしたくはない…。
……頼む、これは俺からのお願いだ」
王子を囮役にするなどあってはならない事。
執事達もこればっかりは止めようとした。
「王子…」
だが王子の意思の強さは、この場にいる者達には充分に伝わっていた。
……黙って聞いていた姐御は、暫くして大きく溜め息をつく。
「……王子の命令ならまだしも、
お願いなら仕方ないね」
まるで言う事を聞かない子供を叱るのを諦めたような口調で言った。
「で、でも姐御様…」
「お前達も諦めな。昔から
王子は言い出したら聞かないんだからさ」