砂漠の月歌 〜dream story〜
警戒心を露にする娘に、ロゼオは笑顔のまま娘の耳元まで顔を近づけ、そして低い声で囁く。
「━━━国王を殺した者だよ…」
咄嗟に後退ろうとしたが、パシィッ…とロゼオに手首を掴まれる。
「そんなに警戒しないでよ…。君には多分
何もしないよ…このまま何もなければね」
「貴方が、国王を…」
王子の父親を殺したという目の前の男を、娘はきつく睨んだ。
「そんな恐い顔しないでよ。
君には人質になってもらいたいだけだよ」
「人質…?何を…、」
娘は男の言っている意味が分からなかった。
「王子が何かしようとしてるらしいからね…
面倒な事になっては困るんだよ。
用心に越した事はないからね、
もしもの時に、君に盾になってもらうのさ」
「……馬鹿な人。
王子がそんな事で動揺する訳ないよ…」
その言葉がたまたま男の気に障ったのだろう。
娘の手首を掴む手にギシッ…と力を込める。
「……っ…」
娘は突然の鈍い痛みで顔を歪めた。