砂漠の月歌 〜dream story〜
そこで漸く執事は思い出す。確かにあの日、執事はこう言った。
『こんな時は、
ちょっとぐらい頼っても良いんだぜ…?
俺は王子の執事なんだからよ…。』
……そう、国王が殺され、王子が宮殿を出ていったあの日、此処で執事は言ったのだ。
「……だから残したんだ。
不本意ながら、姐御達が駆け付けるまで
生きてる保障はなかったんでな」
「王子…」
お前も道連れだ…と王子は付け足すが、裏を返せば王子が自分を信頼してくれていた事になる。
「お前があの時言ってくれたんだからな…
……だから今、俺はお前を頼る事にする」
段差から腰をあげながらそう言って、執事に薄く笑った。
「お、王子っ…!!」
背を向ける王子に、咄嗟に執事は呼び掛ける。
「ぶ、舞踏会の時…
香澄に俺と王子の事、凄く仲が良いから
兄弟みたいって言われた時…、
お、俺さ…本当嬉しかったんだっ…!!
でも何か照れ臭くてよ…。」
今なら言えそうな気がした。例えあの時照れ臭くて言えなかった言葉でも。