未完成人一家
リビングのソファーに娘と向き合って座った。
『真奈ちゃん・・・どうして?・・・』
真奈美は感情の消えた顔をしている。
わざとそうしているのかはわからない。
『お菓子、欲しかったの? おやつが少なかった?
お小遣が足りないなら・・・』
ここまで言うと、真奈美が遮った。
『違うの。 ママ、ごめん・・・
欲しくないの』
いつもの明るい声だ。
『ああ、真奈ちゃん・・・。
お父さんが帰ってくるわ。 でもママ、お父さんには言わないからね、大丈夫だから・・・』
暴君の弘樹が聞いたら大変なことになる。
流石の真奈美であっても、殴られるかもしれない。
真奈美は首を横に振った。
『ママ、違うの・・・ ごめん。』
それだけ言うと、真奈美は二階へ駆け上がっていった。
万里子は長いため息をついた。
一体、何が『違う』のかはわからなかった。