未完成人一家

リビングのソファーに娘と向き合って座った。


『真奈ちゃん・・・どうして?・・・』

真奈美は感情の消えた顔をしている。

わざとそうしているのかはわからない。


『お菓子、欲しかったの? おやつが少なかった?

お小遣が足りないなら・・・』


ここまで言うと、真奈美が遮った。

『違うの。 ママ、ごめん・・・
欲しくないの』

いつもの明るい声だ。


『ああ、真奈ちゃん・・・。
お父さんが帰ってくるわ。 でもママ、お父さんには言わないからね、大丈夫だから・・・』


暴君の弘樹が聞いたら大変なことになる。

流石の真奈美であっても、殴られるかもしれない。


真奈美は首を横に振った。


『ママ、違うの・・・ ごめん。』


それだけ言うと、真奈美は二階へ駆け上がっていった。


万里子は長いため息をついた。

一体、何が『違う』のかはわからなかった。


< 11 / 63 >

この作品をシェア

pagetop