未完成人一家
香代子の苦悩
香代子は母のことが大好きだった。
しかしそのことが、香代子を酷く苦しめた。
母が、幸せそうに見えないのだ。
父と母の間に愛がないことを、幼い香代子は知っていた。
母がいつ家を出てしまっても不思議じゃないと思っていた。
(お母さん、大好きだよ。 お母さんは独りじゃないよ。 私がいるよ。)
香代子は精一杯の愛情を母に伝えたくてまとわりついた。
いつも寂しそうな顔をした母、何かを我慢している母・・・
眠る前に、毎晩泣きながら神様に祈った。
〔お母さんが死んだりしませんように。
いなくなってしまいませんように。
お母さんが死ぬなら、私を先に死なせてください。 神様・・・〕