未完成人一家

幼い頃から暴力に慣れてしまった香代子は、もう痛みを感じなくなっていた。

鼻血を流しても、肋骨を折っても、香代子は抗った。

両親は困惑しきっていた。


香代子は学校にもほとんど行かなくなり、遊びに出掛けた。

暴走族とつるみ、自分に目をつけた年上の不良や、他校の生徒との喧嘩騒ぎをしょっちゅう起こした。


教員としての立場の弘樹は焦り、娘と戸籍上の縁を切る方法はないかと調べたりした。

また、香代子の通う中学へ出向き、不登校であるのに給食費を払う必要があるのかどうかと抗議をした。

最初は戸惑った万里子であったが、次第に香代子を応援したい気持ちになっていた。

自分が絶対できないことを、娘はやっているのだ。

弘樹に逆らい、レールを外し・・・

万里子の胸は高鳴った。

そして、今まで絶対に嫌だと思ってきた『官能小説』を書くことを決めた。



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