未完成人一家
香代子は中学を卒業するとすぐに家を出た。
上京して仕事をすると言っていた。
引き留めるどころか、出て行けとばかりに煽る弘樹を万里子は軽蔑した。
幼かった香代子はともかく、今の香代子は万里子の誇りだ。
誰にもこびることなく、強い相手に立ち向かい、自分の主張を通した香代子。
不良になるという選択には安直さを感じるものの、学校への理不尽さや父親の暴力、弱い者虐めをする年上の人間達を相手に、堂々と戦ったのだ。
不良の先輩を敵に回したらしく、20人の暴走族連中に囲まれ、真ん中に一人で立っていたこともあった。
騒ぎを聞き、万里子は様子を見に行ったのだが、あの時の香代子の勇敢な姿が忘れられない。
しかし、掃除機で香代子を殴り続けたあの時に、香代子の片耳の聴力が失われてしまったことには、気がつきもしなかった・・ ・