未完成人一家

東京から香代子が田舎の実家に帰る頃には夜になっていた。

久しぶりに会った香代子は少し痩せ、顔面は蒼白になっていた。

その症状から、膀胱炎である可能性を疑った万里子は前もって薬局で買っておいた薬を香代子に飲ませた。

『これは応急処置。明日病院に行くから、今日は泊まりなさい。 』

香代子は礼を言うと、静かに眠りこけた。

汗で化粧の剥げた寝顔は、子供の頃のままだった。

(香代子・・・ 可愛い・・・。
やっぱり自分の子を可愛くない親なんていないのよ・・ )


弘樹が大きな音を立てて帰ってきた。

玄関で香代子のサンダルを見つけたのだろう。

すごい剣幕で、二階へ駆け上がってきた。

万里子は息を飲んだ。



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